Salesforce AppExchangeを公開するには?きほんのき <AppExchange徹底解説 #2>

前回の記事では、AppExchangeがスマホで利用するAppStoreやGooglePlayのように、Salesforce用のアプリストアであることと、自社におすすめのアプリの選び方をお伝えいたしました。

本記事では、AppExchangeの構築がどのようなものなのか、セキュリティや販売はどのように行われているのか、大まかな流れに沿って解説します。

1. AppExchangeとは

前回の記事では、AppExchangeの概要やアプリの選び方を解説しましたが、改めてAppExchangeについて概要をまとめます。

AppExchangeとは

AppExchangeはSalesforce用にカスタマイズされたすぐに使えるアプリが揃ったマーケットプレイスです。総インストール数は500万以上で、ライセンス販売数も毎年成長しています。

アプリの種類

種類も多くAppExchangeのサイト内で項目ごとに検索できます。
・価格
・Salesforceエディション
・評価
・カテゴリ別 (セールス、カスタマーサービスなど)

また開発する立場の場合、AppExchangeアプリは公開時の販売スコープによりISVforceアプリとOEMアプリ、二つの種類に分かれます。
・Salesforceユーザに販売する場合:ISVforce
・新規ユーザとSalesforceユーザに販売する場合:OEM(別名:Lightning Platform Enbed)

ISVアプリとは?
・ほとんどのものはSales/Service Cloudの補完アプリ
・リード取得、バックオフィス連携、Einstein Analytics使用のBI、Community使用の業種特化テンプレート、
 Marketing Cloud連携など様々なパターンがある
・利用にはSalesforceライセンスが必要

OEMアプリとは?
・Lightning Platformライセンスが組み込まれている
・Enterprise Editionライセンスがバンドルされるため、Sales Cloudのライセンス無しでもアプリ利用が可能

AppExchangeまとめ

AppExchangeって何? ・AppExchangeはすぐに使えるエンタープライズアプリが揃った
 マーケットプレイスです
・インストール数は500万以上、ライセンス販売も毎年成長しています
ISVforce アプリって何? ・多くはSales/Service Cloudの補完アプリです
・リード取得、バックオフィス連携を始め、Einstein Analyticsを使ったBI、
 Communityを使った業種特化テンプレート、
 Marketing Cloud連携などパターンは様々
・利用にはSalesforceライセンスが必要です
OEMアプリって何? ・Lightning Platformライセンスが組み込まれたアプリです
・Salesforceユーザ以外も使う勤怠管理アプリなどが代表例
・Enterprise Edition ライセンスがバンドルされるため、
 Sales Cloudのライセンスなどを持っていなくてもアプリを利用することができます

ISVアプリとOEMアプリの違いをまとめると、ISVアプリはSalesforceのライセンスが必要な元の機能を強化する役目、OEMアプリはSalesforceのライセンスが組み込まれた新たな機能を付与する役目を担っていると言えるでしょう。

2. プロダクトライフサイクルとオンボーディング

プロダクトライフサイクルとは

アイディアを素早く実現するためのフレームワークおよびプロセスをさし、Plan・Build・Distribute・Market・Sell Support、6つのステージがあります。構築のきほんは「Build」、販売のきほんは「Distribute」にあたります。

オンボーディングとは

ビジネス(契約・販売)とテクニカル(設計・開発)に分かれています。リスティング、ライセンス管理、トライアルなどビジネスに必要なマイルストーンも用意されています。
構築のきほん範囲は開発組織作成からセキュリティレビューまで、販売のきほん範囲はセキュリティレビュー以降です。

3. 構築のきほん

開発組織

開発にはDeveloper Editionを使用します。開発、パッケージ、テストの各組織を使用環境ハブからアクセスすることができます。
無料で使える開発組織

Developer Editionの特徴
・Developer Edition は利用中のSalesforce組織とは”全く別の組織”として自由に取得可能
・複数の組織を持つことが可能
・Developer Edition で開発したプログラムを、他の環境に適用(デプロイ)することが可能

また、プロダクト開発には複数のSalesforce組織を使います。

A. 開発組織
Developer もしくはPartner Developer Edition。一般に複数組織が存在する。

B. パッケージ組織
アプリ(パッケージ)と1対1の関係。名前空間付きのパッケージが設定された唯一のDeveloper組織。

C. テスト組織
システムテストに利用する組織。主にPartner Enterprise Editionを利用。
(※セキュリティレビューではPartner Developer Edition)

環境ハブはPartnerコミュニティに参加した後アクセス可能です。必要な時に組織を作成・管理する機能を持ちます。

*Partner Enterprise EditionやPartner Developer Editionの作成が可能

開発後のデプロイ手法は、アプリによって様々な種類があります。

パッケージ

パッケージは、アプリ配布方法です。アプリを構築し、パッケージングし、顧客組織(ユーザ)にインストールするとアプリが使えるようになります。

パッケージには、管理パッケージ、未管理パッケージの二種類があります。

・未管理パッケージ:コンポーネントを一度だけ配布するパッケージ
・管理パッケージ :プロダクトを継続的にリリースするためのパッケージ

*作成したAppExchangeアプリは管理パッケージを使用します。

セキュリティレビュー

Salesforceがもっとも大切にしているのはお客様であり、お客様のセキュリティを守り保証することで大きな信頼を得ています。AppExchangeで配布するアプリがセキュリティ上問題がないことを「セキュリティレベルに合格する」ことで保証します。AppExchange セキュリティレビューの合格は「お客様の成功と信頼は最も重要な価値」、この信念に基づいており、AppExchangeパートナープログラムの一部となっているため、アプリを開発する企業は必ずセキュリティレビューに合格することが求められます。

参考:AppExchange セキュリティレビューの合格

セキュリティレビューの準備は設計(遅くとも開発)段階から準備が必要です。
プロダクト全体がレビューの対象となり、脆弱性指標ランキングが用意されています。
Secure Coding Guide

まとめ

開発環境って何? ・開発者が自由に取得できて、無償で使える全く別の組織
・Lightning Platformのほとんどすべての機能が使用可能
組織はいくつ必要? ・最低でも3つは必要
・開発組織とパッケージ組織、テスト環境の役割を理解することが重要
・デプロイ手法はアプリによって様々です
環境ハブって何? ・必要な時に組織を作るための機能です
パッケージって何? ・AppExchangeパートナーがアプリを配布する方法
・顧客組織(ユーザ)にインストールするとアプリが使えるようになります
未管理と管理の違いは? ・未管理パッケージはコンポーネントを一度だけ配布するパッケージ
・管理パッケージはプロダクトを継続的にリリースするためのパッケージ
なぜセキュリティレビューが必要ですか? ・何より顧客データを守るため
・AppExchangeパートナープログラムの一部
セキュリティレビューの準備はいつ始めればいい? ・設計(遅くとも開発)段階から準備が必要

4. 販売の基本

オンボーディングはビジネス組織取得後、セキュリティレビュー以降のプロセスを指します。

パートナービジネス組織(PBO)とは

AppExchangeパートナー様向けに無償で提供している2ライセンスのSales Cloud Enterprise Editionです。こちらには、CRMに加え、ライセンス管理アプリ、環境ハブがインストールされています。既に本番組織がある場合は2ライセンス追加されます。

パートナービジネス組織(PBO)とパートナーコミュニティは別組織で役割も異なります。

パートナービジネス組織(PBO)はAppExchangeビジネスの推進が目的です。
目的達成のために以下の内容がインストールされた環境が用意されています。
・顧客管理(SalesCloud)
・ライセンスと機能の管理(LMA/FMA)
・オーダー管理(COA)※日本はパイロット提供
・開発環境と組織の管理(環境ハブ)

ID連携されているので、パートナービジネス組織(PBO)からパートナーコミュニティにログインできます。パートナーコミュニティはAppExchangeリスティングが目的です。以下の内容が紹介されています。
・公開コンソール
・ケース
・学習リソース
・コラボレーション

リストとは

リストは、顧客がアプリを知るための入り口のことです。
リストによりアプリの認知度が高まります。弊社の場合、開発したアプリ「PlainReport」を紹介するこちらのページを指します。

リストの主な役割は製品の紹介です。掲載内容はアプリを説明する
・ロゴ、スクリーンショット、動画
・ホワイトペーパー、ケーススタディ
・マーケティングリソース
・トライアル(オプション)
などです。また、セキュリティレビューの申請やオプションですがリード取得も可能です。

トライアルの目的

トライアルの目的は製品を売ることです。見込み客に無料でアプリケーションを試してもらう体験版を指します。提供方法に3つのオプションがあります。
・インストール可能トライアル
・機能制限トライアル
・Trialforce

「インストール可能トライアル」は顧客が組織にインストールして試用します。簡単に設定できますが、すべての見込み客が組織を持っているとは限りません。またアプリをインストールできるユーザーも限定的です。

「機能制限トライアル」はアプリと事前データを設定した読み取り専用組織にログインして試用します。簡単に設定できますが、データと組織は読み取り専用です。

「Trialforce」は顧客向けのトライアルの組織を「テンプレート」から作成します。より多くをセットアップでき、最大限の柔軟性を持ちます。

*ISVforceアプリでは既存ユーザーにSandboxパッケージをインストールする方法が一般的です。
*OEMアプリではTrialforceを使用して組織ごとに提供するのが一般的です。

アップグレード

軽微な変更に対応するパッチと機能の大幅な追加や変更時に行うアップグレードがあります。
パッチはユーザエクスペリエンスの外見的な更新やバグ修正など、製品の動作に影響しない軽微な変更時に行います。アップグレードは、製品の動作や顧客の操作方法が変わる機能の新規追加や大幅な変更を行う際に実施します。

*弊社のアプリ「PlainReport」も今年実施いたしました。

サポートの目的

契約の継続が一番の目的です。

「見込み顧客」から「商談」を経て「契約」へ。契約継続がサポートの一番の目的です。

PBO(パートナービジネス組織)とライセンス管理アプリ(LMA)


PBO(パートナービジネス組織)を使用して、顧客組織にインストールしたアプリのライセンスが管理できとサポートをすることができます。ライセンス管理アプリ(LMA)では、ライセンスプロビジョニング*、リード収集、機能管理(オプション)が可能です。
*ライセンスプロビジョニング:ライセンスや資源の割り当て・設定を行い、利用や運用が可能な状態にすること。対象や分野によって「サーバプロビジョニング」「ユーザープロビジョニング」「サービスプロビジョニング」などがあります。

アップグレード、ライセンス管理へのQ&A

実際に開発したときに社内で出た質問と答えをまとめました。参考になれば幸いです。

以下の回答はコラムを投稿した現視点での弊社回答ですので、ご参考に留めてください。

Q1 顧客別に別バージョンも提供できますか?

A1 技術的には可能ですが、テストや保守コストが増大するので推奨はしていません。

Q2 アップグレード後にセキュリティレビューは必要ですか?

A2 バージョン毎にレビューが必要です。
ただしバッチやアップグレード全てで完全なレビューが必要というわけではありません。
製品のリストを更新するとSalesforceセキュリティ業務チームが24時間以内にコードをレビューします。

Q3 顧客組織に依存したバグを調べたいときはどうしたらいいですか?

A3 代理ログイン機能を使用して調べます。
まずはアプリケーションのデバッグログを調査します。
さらにISVカスタマーデバッガを使用すれば、実行時の管理パッケージコード調査・デバッグも可能です。

まとめ

前回のユーザー目線での解説に続き、今回はどのようにプロダクトを開発し、販売は具体的にどう行うのか、公開にあたって気をつける点などを開発目線で説明しました。製品を作って終わりではなくプロダクトは6つのステージで展開し、トラブルシューティングやアップグレードを行い日々進化しています。「構築」後の「販売」も、ライセンスやトライアル管理がありプロダクトの品質を担保するのに必須の作業と言えるでしょう。セキュリティレビューにある「お客様の成功と信頼は最も重要な価値」も必須で、設計時からこの考えを意識して開発に着手することが求められます。

Salesforceの開発に興味はあるが、どうしていいかわからない場合、Trailhead上で無料で開発を学ぶことが可能です。
AppExchange パートナーとしてのアプリケーションの作成

ここではソリューションの計画、設計、開発、販売、配布を学び、他パートナーとつながり、エキスパートと交流し、新しい知識を得ることができます。
アプリ導入時は、導入したものをどう生かすかが問題でした。開発する際は、開発したアプリをどのように使っていただくか、トラブルシューティングやアップグレードをどうするか、導入とは全く異なる面からアプリと向き合うことになります。技術者としてはやりがいのある腕のみせどころとなる仕事です!

おまけ

弊社もAppExchangeパートナーですので、AppExchangeアプリをいくつか提供しております。ご興味ある方はぜひ以下の紹介動画もご覧ください。

PlainReport – 簡易Excel帳票/ユーザー数・帳票出力数 無制限

Satoru-月次型売上・人材アサイン・仕入のForecast管理ソリューション

BacklogSync – BacklogとSalesforceをかんたん連携

ADXコンサルタントはお客様の成功のために Salesforce AppExchangeアプリを利用してビジネスを発展させるためのお手伝いをさせていただいております。
最後まで読んでいただきありがとうございます。気になる内容がございましたら、お気軽にご相談ください!

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