2023年11月末、ザ・プリンス パークタワー東京で開催されたSalesforce World Tour Tokyoは、AIとデータの力をビジネスにどう活かすかを探る、洞察に満ちたイベントでした。
今回は、「なぜマーケティングにAIとデータが必要なのか〜事例に学ぶデータの価値〜」というセッションから、特にMarketing Cloudの進化に焦点を当ててレポートします。
今、AIの世界では何が起こっているのか
昨今AIについてのニュースが絶えないような状況ですが、実際に私たちのビジネスにおいてどの部分が変わってきているのでしょうか。Salesforce社製品マネジメント, Data Cloud Strategy & Operation バイス・プレジデントであるシャッシュ・ゴヤルさんは以下のように説明されていました。
新しいAIモデルを原動力にビジネスの基盤そのものが大きく動いている。それは深層学習(ニューラルネットワークと呼ばれるアルゴリズムを使用して、入力と出力のセットの間で関連性を見つけること)が大幅に進んだこと、それをもとに大量のデータが生み出されAIの燃料になっていることが理由の一つになっている。またテクノロジーだけでなくお客様からの個別化されたニーズが生まれている。(要約)
つまり従来以上のデータが今後AIによって生み出され、我々ビジネス側もまたそれに対応していく必要があるということです。そしてそれらに対応するためにはそれぞれの企業で効率的かつ安全に、信頼できる「AI戦略」が必要であるとのことでした。
生成・予測型AIを組み込んだMarketing Cloudの変化
生成・予測型AIを利用することによってマーケティングに関わるこれまで手動で行ってきたことが自動化され、劇的に時間を削減することができるようです。以下の画像のように従来では時間がかかっていたMarketing Cloudでの作業も、今後発表される生成AIを用いることによって、自動で作成してくれるようになるとのことです。
出典:https://event.salesforce-japan.com/wttnov23/v/s-1760470?i=dC6oouA2-k8K6X8KV5el_RybhUE80ox-
そういった生成・予測AIを組み込むことでMarketing Cloudは具体的に以下の3点でパワーアップしたようです。
実践的なデータ
出典:https://event.salesforce-japan.com/wttnov23/v/s-1760470?i=dC6oouA2-k8K6X8KV5el_RybhUE80ox-
データは行動に直結され、どのようなソースであってもすべてのデータが任意のカスタマープロファイルに統合化されるようになる。これによりお客様についてよく知り、セグメントを簡単に作成でき、データに対するアクションをすぐにとることが可能になる。
パーソナライズの大規模な展開
出典:https://event.salesforce-japan.com/wttnov23/v/s-1760470?i=dC6oouA2-k8K6X8KV5el_RybhUE80ox-
キャンペーンのライフサイクルにAIを組み込んでいるため、Sales Cloud/Service Cloud/Commerce Cloudとつながり、どのチャネルでも個別化していく顧客のニーズに柔軟に対応が可能。
マーケティングパートナーのエコシステム
出典:https://event.salesforce-japan.com/wttnov23/v/s-1760470?i=dC6oouA2-k8K6X8KV5el_RybhUE80ox-
各企業のスピードに合わせたイノベーションを実現可能。
Data Cloud とMarketing Cloudのコラボレーション
出典:https://event.salesforce-japan.com/wttnov23/v/s-1760470?i=dC6oouA2-k8K6X8KV5el_RybhUE80ox-
今後のアップデートによりData Cloudの中に組み込まれたSegment Intelligenceとのコラボが可能になることで、従来以上のスピードで自社の特徴に合わせたセグメントを簡単に作成する事ができるようになります。これまでマーケターは自社の成長に貢献するために活動をしてきていましたが、このコラボレーションによりそういった活動が加速し正確になると思われます。
Data Cloud for Marketing のプラットフォーム内インテリジェンスツールであるセグメントインテリジェンスを使用してセグメントパフォーマンスに関するインサイトを取得します。セグメントインテリジェンスでは、簡単な設定プロセス、標準のデータコネクタ、事前に構築された視覚化を使用して、一般的なチャネル (Marketing Cloud Engagement、Google 広告、Meta 広告、Commerce Cloud など) 全体でセグメントとアクティベーションを最適化できます。
※Salesforceヘルプより引用
https://help.salesforce.com/s/articleView?id=sf.mc_rn_2024_winter_seg_intelligence.htm&type=5
Marketing AIの活用
出典:https://event.salesforce-japan.com/wttnov23/v/s-1760470?i=dC6oouA2-k8K6X8KV5el_RybhUE80ox-
Marketing AIと呼ばれる生成AIを利用することでメールコンテンツの作成や取材文の作成などが簡単になります。またTypeface(https://www.typeface.ai/)とのパートナーシップを結んでいるためブランド化されたイメージを生成することが可能です。このようなツールを利用することによって、セグメントの作成やパターン化を自然言語で行うことができます。
カスタマージャーニーとCRMのパーソナライズ化
出典:https://event.salesforce-japan.com/wttnov23/v/s-1760470?i=dC6oouA2-k8K6X8KV5el_RybhUE80ox-
マーケターがAIを利用することで作業スピードが上がる理由の一つに「ジャーニーの再マッピング」があります。AIが実際にお客様の反応を確認し、最もお客様に合ったシナリオをマーケターへ提案し示唆を与えてくれます。あらゆるデータがお客様に接続されることにより仕事をうまく効率的に対応することができるようになります。
※カスタマージャーニーについて
ITの普及によって、オンラインのさまざまなチャネルを横断的に活用して、情報収集や購買活動を行う顧客が増えています。そこで重要なのが、顧客が最終的な意思決定に至るまでの流れを可視化し、さまざまな接点で適切なコミュニケーションを設計・実施するカスタマージャーニーの考え方です。
※Salesforce公式サイトより引用
https://www.salesforce.com/jp/resources/articles/marketing/customer-journey-map/
Marketing Cloud進化の背景
これまで書いてきたように、Marketing Cloudは生成・予測型AIを組み込むことにより大幅なパワーアップが可能になり、これまで以上にSalesforceを利用している企業のマーケターを助ける機能が追加されました。ではこの背景で何が起きているのでしょうか。それは「Einstein 1 Platform」と「Data Cloud」、この2つのサービスの登場が起因しています。
Einstein 1 Platform
出典:https://event.salesforce-japan.com/wttnov23/v/s-1760470?i=dC6oouA2-k8K6X8KV5el_RybhUE80ox-
Einstein 1 Platformは信頼されるAIプラットフォームで企業とお客様をつなげる全く新しいプラットフォームになります。これはSalesforce内に蓄積されたデータをメタデータフレームワークに組み込むことで、アプリケーション/ワークフローに関わりなくData Cloudの中で利用することが可能です。
Salesforce Data CloudとEinsteinのAI機能の大きな進歩を特徴とする同プラットフォームは、そのすべてがSalesforceの基盤となるメタデータフレームワーク上に構築されています。企業はEinstein 1 Platformを利用して、あらゆるデータを安全に結び付け、AIを活用したアプリをローコードで構築し、まったく新しいCRM体験を提供することができるようになります。
※Salesforce公式サイトより引用
https://www.salesforce.com/jp/company/news-press/press-releases/2023/09/230913-2/?d=cta-header-73
Data Cloud
出典:https://event.salesforce-japan.com/wttnov23/v/s-1760470?i=dC6oouA2-k8K6X8KV5el_RybhUE80ox-
Einstein 1 Platformの中心に位置しているのがData Cloudになります。Data Cloudを利用することで様々な製品(Sales Cloud/Service Cloud/Commerce Cloud)を超えてデータを取得することができるため、AIを利用したビジネス戦略・Ai戦略・カスタマーエンゲージメント戦略を建てる際の堅牢なデータ基盤となります。必要なデータが複数のクラウド/組織に保存されているような状況をこのData Cloudで解決できます。これからの時代に対応すべくData Cloudは「Salesforce史上、最も急速に成長している製品」といえるでしょう。
Data Cloudにより、Salesforceの各種アプリで顧客データを有効に活用できるようになります。状況にあったインサイトとデータを、業務の流れのなかで使うことで、あらゆる顧客接点で相手との関係強化を図れるでしょう。
※Salesforce公式サイトより引用
https://www.salesforce.com/jp/products/data/
企業でAIを利用していく際のロードマップ
出典:https://event.salesforce-japan.com/wttnov23/v/s-1760470?i=dC6oouA2-k8K6X8KV5el_RybhUE80ox-
企業がビジネスでAIを利用していくにあたり、ある程度のロードマップが必要となります。その際に抑えておくべき点は以下の3点だそうです。
AI戦略を開発すること
AI技術を効果的に活用するためには、組織全体のビジョンと目標に合わせた明確な戦略が必要です。これにより、AIの導入がランダムな試みではなく、ビジネスの成長とイノベーションを目的とした計画的な取り組みとなります。また、AI戦略を開発することで、投資の優先順位やリソースの割り当て、期待される成果の明確化が可能になります。これによりこれまで手作業で行っていて時間がかかっていた業務の時間短縮や、生産性の向上につながります。
シンプルなユースケースからスタートすること
AI導入の初期段階では、複雑なプロジェクトよりも実現可能で効果的な小規模なユースケースから始めることが重要です。これにより、チームはAI技術に慣れ、小さな成功を積み重ねることができます。また、初期の成功体験は組織内でのAI受容度を高め、より大規模なプロジェクトへの移行をスムーズに行うための基盤を築きます。
信頼できるデータでAIを基礎教育すること
AIモデルの精度と効果は、教育に使用されるデータの質に大きく依存しています。信頼できる、正確で整理されたデータを用いることで、AIはより正確な予測や分析を行うことができます。また、良質なデータに基づくトレーニングは、AIモデルが実際のビジネス環境で適切に機能するための基礎を築きます。これにより、AIの導入初期における誤解や誤った期待を減らし、長期的な成功への道を開くことができます。
Salesforce World Tour Tokyo「なぜマーケティングにAIとデータが必要なのか〜事例に学ぶデータの価値〜」の所感
Salesforce World Tour Tokyo 2023では、AIとデータがどれほど私たちのビジネスに革新をもたらすか、その深い洞察を得る機会となりました。特に、Marketing Cloudの進化は、データをより効率的に活用し、顧客体験を高める新たな道を示してくれました。このイベントから私が学んだのは、AIが単に技術の範疇を超え、ビジネスプロセスや顧客関係を根本から変える力を持っていることです。AIによる個別化された顧客体験の提供や、マーケティング戦略の効率化は、今後のビジネス成長の鍵となるでしょう。しかし、そのためには、AIを最大限に活用するための戦略的なアプローチと、信頼できるデータの活用が不可欠です。AIの可能性を活かし、次世代のマーケティングを創造するために、私たちは常に学び続ける必要があります。この刺激的なイベントは、そんな新たな未来に向けた第一歩となりました。
このセッションではこの後具体的な活用事例も紹介されていますので、是非アーカイブ動画をご確認ください。
当社ではSalesforceを活用してDXを実現するコンサルティングを行っております。お困りの点などございましたらお気軽にご相談ください。
ご相談はこちら